研究概要 |
核膜孔複合体と核輸送因子との相互作用を介した核-細胞質問の選択的分子輸送は,核膜を有する真核生物にとってほぼ全ての生命現象に関与する重要な細胞内プロセスの一つであるが、細胞内シグナル伝達によるこの輸送システムの制御機構は殆ど明らかにされていない。これまでに我々はリン酸化プロテオミクス的手法によって新規ERK/MAPキナーゼ基質として核膜孔複合体構成因子(ヌクレオポリン)の一つであるNup50を同定し、そのFG(フェニルアラニン-グリシン)リピートドメインがERKによってリン酸化されると核輸送因子であるimportin-βとの結合能が抑制されることを見出した。本年度はまず、in vitroキナーゼアッセイとPhos-tagウエスタンブロット法により、多数のFGおよび非FGヌクレオポリンがERK、p38、Cdk1/cyclin B、Chk2などの複数のキナーゼによってin vitroないしin vivoでリン酸化されることを明らかにした。そしてGSTプルダウンアッセイにより、Nup50だけでなく、Nup58、Nup62、Pom121、Nup153、Nup214などのFGヌクレオポリンがERKによってリン酸化されるとimportin-βとの結合能が全て抑制されることを見出した。さらにNup153のN末側のFGリピート領域のリン酸化によるimportin-βとの親和性の変化をプレートアッセイ法によって定量的に解析した。核膜孔における多数のFGヌクレオポリンのリン酸化を介して様々なシグナル伝達キナーゼが核-細胞質問輸送を制御している可能性が考えられる。
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