研究概要 |
遺伝子発現制御領域の2本鎖DNAの一部がほどけて生じた1本鎖DNAが他の2本鎖DNA領域に結合して分子内3本鎖DNAを形成し、3本鎖DNA結合蛋白質STM1がこれに結合し、下流の遺伝子発現を制御する可能性が指摘されている。筆者は、STM1の1-113アミノ酸が3本鎖DNA結合ドメイン(TBD)であり、2本鎖DNAに結合せず、3本鎖DNAに特異的に結合することを既に明らかにしている。また、STMTBDが3本鎖DNAの塩基配列よりも、3本鎖DNAの形状を認識して結合することも既に明らかにしている。従来^<32>P標識3本鎖DNAを用いたゲルシフト法でSTM1TBDと3本鎖DNAの結合能を解析したが、本年度はビオチン標識3本鎖DNAの調製方法を確立し、Biacoreによるnon RIでの結合能の解析を可能にした。具体的には、3'末端をビオチンで標識した1本鎖DNAと相補鎖DNAをアニーリング後、5'末端をソラレンで標識した3本鎖DNA形成用1本鎖(TFO)と混合して3本鎖DNAを形成し、光クロスリンクでTFOと2本鎖DNAを共有結合で結んだ。反応産物を未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、3本鎖DNAをゲルから切り出し、未反応の2本鎖DNAを除いた。精製した3本鎖DNAを再び電気泳動で分離後、ウェスタンブロッティングで膜に転写し、抗ビオチン抗体で3本鎖DNAを検出することができた。このようにして調製したビオチン標識3本鎖DNAを、Biacore用キュベットに固定化して結合能の解析に用いた。BiacoreでSTM1TBDと3本鎖DNAの結合能を様々なイオン強度で解析したところ、イオン強度の増加と共に結合能が減少し、STM1TBDと3本鎖DNAの結合には静電相互作用が重要であることを明らかにした。また、Arg68, Arg69, Lys83, Lys84, Arg88, Arg89, Arg93, Arg96, Lys99をAlaに置換した点変異型STM1TBDと3本鎖DNAの結合能は、野生型STM1TBDと3本鎖DNAの結合能に比べて数倍低下し、これらの変異アミノ酸が3本鎖DNAとの結合に関与している可能性が示された。
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