公募研究
大気中の炭酸ガス濃度上昇を抑制するためには、植物個葉の光合成活性をこれまで以上に増大させる必要がある。しかし、光合成活性の増大は、葉肉細胞中に過大の糖蓄積をもたらし、光合成関連遺伝子の負の発現フィードバックをまねいてしまう。この問題を合理的に回避するためには、ソース葉からシンク組織への糖転流経路を拡大し、糖転流量の増大を図る必要がある。シロイヌナズナの変異株restricted sucrose export1 (rsx1)は、糖転流経路の二次原形質連絡の形成が異常となり、糖転流が部分的に阻害された変異株である。rsx1-2植物をRSX1-EYFP遺伝子で相補した変異復帰株rsx1-2 RSX1-EYFPを作成し、RSX1-EYFPの蛍光が細胞壁に見いだされることを明らかにした。また、3D-SIM顕微鏡では、細胞壁の細胞質側から中葉方向に蛍光が展開する様子が観察された。rsx1-2変異株では野生型に較べて、ソースからシンク(シュートとシンク葉)への同化ラベル産物の転流が大きく阻害された。一方、変異復帰株rsx1-2 RSX1:sGFPでは、野生型と同様の同化と転流が見られた。さらに過剰発現株Pro35S-RSX1/-では、根への転流量が顕著に増加することを明らかにした。以上の結果は、RSX1がソース葉から地上部シンク組織への転流に関与することを示している。野生型は、基準CO_2濃度(390ppm)に較べて高CO_2濃度(780ppm)下で、花成遅延を起こすことが知られている。rsx1-2ではこの花成遅延の効果が、野生型に較べ著しく増強されていた。また、高CO_2濃度下では、rsx1-2のアントシアニン蓄積も著しく増加した。
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The Plant Journal
巻: (In press)