研究概要 |
本研究では陸上植物の高CO_2に対する細胞生物学的な応答機構を解明するため,シロイヌナズナを材料に用いて顕微鏡画像に基づいた網羅的な定量イメージング解析および画像データベース構築を実施する.採択初年度である本年度は高CO_2処理の実験系を立ち上げるとともに,高CO_2処理が気孔の密度と分布に及ぼす影響に関して重点的な解析を行った.気孔の位置を正確かつ高効率に捉えるために孔辺細胞特異的にGFPを発現するシロイヌナズナ(Co1-0)のエンハンサートラップラインを材料とし,発芽後3-8日目における背軸側の子葉表皮の連続光学切片像を共焦点レーザー顕微鏡により取得した.なお,本研究で取得した画像は全て当研究室のホームページにて公開している(http://hasezawa.ib.k.u-tokyo.ac.jp/lips/co2).一連の取得画像群から葉面積を測定したところ,高CO_2処理(1000ppm)により葉面積が増加する傾向が認められた.また,気孔の位置を自動抽出する独自の画像解析プログラムを用いて気孔の密度と分布を評価した.その結果,高CO_2処理により気孔密度に目立った変化は検出されなかったが,最近傍にある気孔どうしの距離が狭まるなど,気孔の分布に関しては顕著な変化を捉えることができた.この分布の変化は葉面積が3mm^2以上の比較的大きな子葉で顕著であったため,高CO_2処理により子葉の展開後に新たに発生する気孔の位置が乱れる可能性が考えられる.今後,メリステモイド特異的にGFPを発現するエンハンサートラップラインなどを用いて高CO_2が気孔の発生パターンに及ぼす影響について詳細に評価する予定である.
|