公募研究
平成23年度には次のような進展があった。1.剥皮したツユクサを用いた光合成のCO2濃度依存性を明らかにした光強度1000μmol/m^2/sで光合成のCO_2濃度依存性を測定した。その結果、剥皮した葉とインタクトな葉の濃度依存性は一致することが明らかとなった。インタクトな葉でA_<max>が異なる場合、CO_2濃度を上げていく際の初期勾配はA_<max>に比例していた。このことはルビスコの反応がミカエリス=メンテン式で近似的に記載できる反応であることを示している。別に得ていた酵素反応速度論の近似なしの解から、ルビスコは(もっとも量の多い酵素ではあっても)総酵素濃度がk_m(正確には最大反応速度の半分を与える遊離基質濃度のこと)よりも非常に低い状態にあることが示唆された。2.門司・佐伯による群落光合成理論を再検討したたとえオープンな環境であっても、弱い光の多い現実の光のもとでは門司・佐伯の予測(=葉を立てると純生産量が増加する)が成立するのは限られた植物の場合でしかないことが理論的に明らかとなった。すなわち、A_<max>の大きくなりがちな草本では葉を立てる効果はほとんどなく、A_<max>の小さな木本でのみ葉を立てることは効果的であった。これはここ数十年にわたって行われてきたイネの育種及び栽培法には大きなメリットのないことを意味している。一方、常緑針葉樹のようにA_<max>が小さく、葉面積指数(LAI)の大きな植物では葉が立っていることは純生産量を上げるのに役立つことになる。ただし、この場合にはCO_2濃度が上昇した場合の純生産量の増加は少ないはずである。現在、スギの実生を用い、予測の検証を試みている。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Agricultural and Forest Meteorology
巻: 152 ページ: 1-10