研究概要 |
本研究課題では、糖タンパク質として知られているイネデンプン集積抑制酵素のプラスチド局在化機構の解明および本酵素の機能発現に及ぼす高CO_2濃度および高温の影響を明らかにすること、さらに、高CO_2濃度、高温下における野生型およびデンプン集積抑制酵素の発現制御体の形質調査で得られた知見を基に、本ストレス条件下におけるイネデンプン集積強化法を探ることを目的としている。平成22年度の研究成果は下記の通りである。 (1)イネデンプン代謝関連糖タンパク質のプラスチド局在化機構の解明:ヌクレオチドピロボスファターゼ/ホスホジエステラーゼ(NPP)1のN-末端シグナル配列は分泌経路に入るために必要であるが葉緑体局在化には十分ではなく、タンパク質の内部領域(308-478アミノ酸残基)が葉緑体局在化に必須であることが分かった。葉緑体局在型NPP1のN-結合型糖鎖の77%がフコースやキシロース残基を含む複合型糖鎖であったことから、大部分のNPP1はゴルジ装置のトランス区画を介して葉緑体に輸送、局在化するものと考えられた。 (2)イネ野生型およびデンプン集積抑制酵素機能欠損変異体のデンプン集積特性に及ぼす高CO_2濃度および高温の影響:ADP-グルコース加水分解型、NPP1遺伝子のTos17挿入変異体npp1の緑葉同化デンプン含量は野生型に比べ1.77~1.96倍に増加し、npp6変異体の種子デンプン含量については1.24~1.27倍に増加することが分かった。続いて、npp1変異体の初期成長期(10~17d)のデンプンおよびショ糖の蓄積量に及ぼす高CO_2濃度(1,200ppm)、高温(昼14h,33℃、夜10h,28℃)の影響を調べたところ、イネシュートにおけるNPP1の生理機能が対照条件(CO_2濃度400ppm、昼14h,28℃、夜10h,23℃)と高CO_2濃度、高温条件下とでは異なることを示唆する結果が得られた。
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