研究概要 |
平成23年度の研究成果は下記の通りである。 (1)イネ澱粉代謝関連糖タンパク質のプラスチド局在化機構の解明:イネヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ糖タンパク質アイソザイム(NPP1、2、3、6)の遺伝子にGFPを連結し、イネ細胞に導入、発現させ、それらの葉緑体局在化能をレーザー共焦点蛍光顕微鏡で観察した。NPP2-GFPとNPP6-GFPはNPP1-GFPと同様に葉緑体に局在したが、NPP3-GFPは葉緑体局在化能を持たないことが明らかになった。NPP1、2および6のN-グライコーム解析から、NPP糖タンパク質のプラスチドターゲティングにトランスゴルジが深く関与することが推察された。さらに、トランスゴルジマーカー遺伝子ST-mRFPをイネに導入し、その挙動を観察したところ、NPP1強発現下でST-mRFP標識膜小胞が活発に葉緑体に取り込まれることが見いだされた。これらの結果から、NPP糖タンパク質のプラスチド局在化機構にトランスゴルジ体-プラスチド間の膜交通が重要な役割を果たしていることが強く示唆された。 (2)イネ澱粉集積抑制酵素機能欠損変異体の澱粉集積特性に及ぼす高CO_2濃度および高温の影響:植物CO_2インキュベータを用いてTos17挿入変異体npp1(日本晴)の初期成長期(10~17d)の生重量と澱粉蓄積量に及ぼす高CO_2濃度(1,200ppm)、高温(昼12h,33℃、夜12h,28℃)の影響を調べた。npp1変異体シュートにおいては、対照条件(光:300μmol/m^2/sec、CO_2濃度:400ppm、温度:昼12h,28℃、夜12h,23℃)から高CO2条件に移すと顕著な生重量と澱粉蓄積量の増加が観察された。澱粉蓄積については高CO_2・高温条件に置くと増加傾向がより高まることが見いだされた。このnpp1変異体の高CO_2応答機構を探るために、iTRAQ標識法を用いた定量的ショットガンプロテオミクス解析を試みた。高CO_2条件下においてnpp1変異体のタンパク質発現は野生型に比べて大きく変動することが観察され、npp1変異体が高CO_2に敏感に応答しているものと考えられた。
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