本研究の目的は、光強度が変動する環境下での光合成や葉の物質生産に及ぼす高CO2環境の影響を明らかにすることである。そこで、本研究では、以下の3つの実験を行った。実験1では、光強度の変化に対する気孔開度の変化が非常に小さいポプラ(Populus koreana × trichocarpa cv. Peace)と普通の気候開放を示すPopulus euramericana cv.I-55を380、700、1020μmolCO_2 mol^<-1> airの濃度条件下で栽培し、光合成誘導反応とその生理的生化学的メカニズムについての測定と解析を行い、高CO2環境下での光合成誘導反応の加速を確認できた。実験2では、人工的に創り出した変動する光環境において380と700μmolCO_2mol^<-1> airの環境下で上記のI55を栽培し、変動する光環境下での物質生産に及ぼす高CO2環境の影響評価を行い、高CO2濃度下で変動する光強度下での光合成物質生産量が高いことがわかった。さらに、高CO2環境下で光合成誘導反応の温度依存性について、高CO2濃度環境での光合成誘導反応の加速は、測定温度が高くなると加速が大きくなることが示された。また、高CO2環境下では、光合成誘導反応の最適温度域は高くなることも示した。 また、高CO2濃度環境下で光合成誘導反応と生化学的メカニズムについて、(1)すべてのCO2条件下で生育した植物は、光合成誘導反応速度の増加率がRubisco含有量の増加に伴い高くなった。特に、高CO2濃度環境下で生育する植物は、Rubisco含有量の増加に伴う光合成誘導反応速度の加速がさらに有意に高くなった。(2)高CO2環境下で生育するPeaceは、RubiscoあたりのRubisco Activase量が増加した。高CO2環境下でのRubiscoの迅速な活性は、光合成誘導反応の加速に貢献していることが示唆された。(3)高CO2環境下ではRubiscoの活性率も高くなり、それが光合成誘導反応の加速に貢献していることも示唆された。
|