Piwi-interacting RNA (piRNA)は、siRNAやmiRNAに続く第3の低分子非コードRNAであり、その名の通りRNA結合タンパク質Piwiサブファミリーに結合する低分子RNAとして発見された。piRNAは生殖細胞特異的に存在するという点で、他の2種類の低分子RNAと異なっている。piRNAの生理学的研究、および生化学的機能解析に関する直接的な研究例はあまりないが、その主たる原因は、piRNAを発現している培養細胞系がいずれの生物からも見つかっておらず、piRNAの生合成系の解析が困難であった、ことにある。申請者らは、カイコの生殖細胞分化の研究過程でカイコ卵巣にpiRNAが大量に存在することを発見した。 また、カイコの生殖系列由来培養細胞をスクリーニングすることによって、Piwi/piRNA複合体を発現する培養細胞(BmN4)を世界で始めて発見し、また、その細胞においてpiRNA生合成カスケードであると考えられているping-pongサイクルが存在することを証明した。今年度は以下の研究を実施し、成果を発表した。 (1)カイコの胚発生ステージ段階別のpiRNAプロファイルを精査し、母性遺伝するpiRNAの存在、およびセンス鎖のトランズポゾンRNAがpiRNAの前駆体であり、ping-pongサイクルによってpiRNAが増幅することを可視化した(論文投稿中)。 (2)カイコBmN4細胞を用いたpiRNA生合成系のin vitroアッセイシステムの構築に成功した(東京大学・分生研・泊研究室との共同研究、論文投稿中)。
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