Sno1はヘリカーゼに特徴的なドメインを含む核タンパク質であり、ショウジョウバエを用いた研究からはNotchシグナリング関連因子であることが知られている。しかし、これまで脊椎動物における発現パターンや機能については未知であった。申請者はまず、マウス初期胚でのSno1の発現をWhole mount in situ hybridizationと抗Sno1抗体を用いた免疫化学染色によって解析した。その結果、Sno1は着床前胚期から核で強く発現しており、また着床後は前体節中胚葉、中枢神経系、神経堤などで強く発現し始め、その後、発現パターンを広げて全身で発現するようになることが分かった。次に、当研究室で作製したSno1ノックアウトマウスの表現型を解析した。その結果、Sno1ノックアウトマウス胚は胎生2.5日目の桑実胚期までは正常な形態で発生するが、胎生3.5日目に胚盤胞を形成せずに致死となっていた。ノックアウトマウス胚では細胞分裂が減少し、細胞死が著しく増加していた。また、分化マーカーを用いてノックアウトマウス胚の細胞の特性を調べたところ、内部細胞塊は正常に発生しているが、栄養外胚葉が分化していないことが分かった。さらに、ノックアウトマウス胚ではApico-basal細胞極性や細胞間接着が乱れていた。これらの結果は、Sno1が哺乳類着床前胚期の発生において必須の因子であることを示しており、また細胞分裂や細胞極性形成、細胞間接着などの普遍的な細胞活動にも関与している可能性を示唆している。
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