公募研究
心房細動は、複数の環境因子と遺伝的因子が関与する他因子疾患であり、環境因子と遺伝的因子の相互作用に軽度の持続性炎症が関わることが示唆されている。申請者は予備実験で心房細動発症リスクとなる遺伝子多型の解析を行い、その結果から環境因子-遺伝因子相互作用において複数の炎症パスウェイが関与することが示唆された。初年度はこの中から危険シグナル(danger signal)としてATPとROSが関わる2つのパスウェイの解析を行った。(1)ATP関連経路:近年ATPがマクロファージでのinflammasome活性化に関与することが示唆されている。これに加えて、ATPがマクロファージの動員も行うことが示唆された。心筋細胞進展により心筋細胞からATPが分泌され、パラクライン作用としてマクロファージの動員を行う。In vivoで心房筋の伸展刺激によりマクロファージの心房への動員、心房の線維化、心房細動発症が見られるが、ATP分泌経路の阻害薬を前投与しておくとこれらが抑制されることが確認された。ATPによるinflammasome活性化とマクロファージ動員におけるシグナル経路の相違、特にTLR4やNALP3の関与について検討を行っている。また、ATP分泌経路のKOマウスの作成も行っている。(2)ROSによりマクロファージのinflammasomeが活性化されることが知られている。心房細動の遺伝的リスクとしてROS産生経路の遺伝子が同定された。In vitro実験系で、同遺伝子の過剰発現、ノックダウンにより細胞生存が影響されることが確認された。細胞生存経路として、アートファジーやmTORの関与の検討を行っている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件)
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