本研究はシグナル伝達制御の観点から自然炎症の発症機序の解明を目指すものである。これまでに、TLRシグナルに重要なアダプター分子TRAF6がT細胞で欠損すると、変異マウスのT細胞が自然に活性化し、IL-4産生およびIgEレベルが上昇して皮膚炎を含む重篤な多臓器炎症性疾患が発症することを報告している。TRAF6欠損T細胞が自然に活性化する分子機構を解明するため、昨年度にマイクロアレイ解析で同定した候補遺伝子の解析をおこなった。マイクロアレイ解析によりTRAF6欠損T細胞で、E3ユビキチンリガーゼであるItchの発現低下を認めたので、RT-PCR法によってItchの発現レベルを調べたところ、野生型に比べ、確かにTRAF6欠損T細胞でmRNAの発現が低下していることが確認された。Itchは、IL-4の発現に重要な転写因子Jun-Bの活性を抑制することが知られており、Itch変異マウスもT細胞特異的TRAF6欠損マウスと同様にIL-4の産生が亢進し皮膚炎を発症する。そこでTRAF6欠損T細胞のJun-Bの活性化をWestern Blot法で解析したところ、変異T細胞でJun-Bの活性化が確認された。従って、TRAF6欠損による自然炎症の発症機序のひとつとして、Itchの発現低下によるJun-Bの活性化が関与していることが示唆された。
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