本研究は、研究項目1「『不気味の谷』現象におけるヒトの脳活動計測」、および研究項目2「インタラクティブロボットの認識過程」からなる。本研究では、ロボットの特性を連続的・段階的に変更したときの脳活動に与える影響を調べるが、これを容易かつ厳密に統制された方法で行うために3次元コンピュータグラフィクス(3DCG)によるロボットの映像を用いる。脳活動計測には、非侵襲計測手法である近赤外分光法(NIRS)を用いる。平成22年度は、まず実験環境の構築を行い、ロボット3DCG映像の作成を行った。さらにロボットの外見と動きを変化させ、このときの動きを観察しているときのミラーシステムの活動を計測した。その結果、アームロボットよりも人型ロボットの方がミラーシステムの活動が強まること、および人型ロボットはロボットらしい動きをした時のほうが人間らしい動きの時よりもミラーシステムの活動が高まる傾向が見られた。ロボットは人間らしい動きよりもロボットらしい動きの方が脳活動が強まるという結果は先行研究とも整合性がある。さらに人間の外見を持つCGアニメーションを用いて、運動の途中に短いポーズを挿入することで動きの不自然さを操作した実験を行った。その結果、スムーズな運動よりも少し不自然な運動の方がミラーシステムの活動が強まること、しかし不自然さが増すとむしろ不活性化することを見出した。これらの成果はロボットの動作を観察しているときの脳内情報処理過程について重要な知見を与えるものであり、国際会議や国際ジャーナル誌にて発表予定である。また研究項目2については、データグローブを用いたロボットインタラクション実験のデザインを考案し、データグローブの動作確認をおよび予備実験を行った。平成23年度にはこれを用いた脳活動計測実験を行う予定である。
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