ロボットに思いやりを感じさせるコミュニケーション力を求めるために、本研究では、人間同士の対話における「適切な間(ま)」の原理的な理解と、それを参考にしたロボットの対話リズム構築、を目的とする。特に脳波を用いた同期現象に注目して、人と人の対話リズム、その2被験者より同時に得られた脳波リズムの関係性を明らかにすることで新たなコミュニケーション原理を提案する。 第1に、人と人の対話リズムにおける快適性を評価するために、色の好みや金銭報酬、動機づけなど、感情の変化に関係する脳波リズムを評価することを本年度の目標とした。結果として、金銭報酬は認知作業の能率を向上させること、それには前頭葉のシータ波とベータ波が関与することを示した。そしてこの異なる脳波リズムは位相カップリングすることで動機づけを評価することがわかった。この知見は色の主観的な好みを使用した場合も類似していた。またドライビングシミュレータを用いた課題遂行時のアルファ波とシータ波の組み合わせによって、各被験者の快適性に応じたパフォーマンス向上を判別することに成功した。 本年度はさらに、対話コミュニケーション実験と協調コミュニケーション課題遂行時の2被験者の脳波を同時計測した。その結果、従来社会性に関係するとされてきた10Hz前後の運動野の活動が2人の協調が見られたときにのみ観測された。来年度はこのデータを詳細に解析し、快適性に関係する脳活動との対応も調べる予定である。 そして以上の知見を利用して、来年度は、人同士の適切な間を組み込んだロボットとの対話課題によって、人-人と人-ロボットのコミュニケーションに対する脳波リズム・対話リズムの相違を分析し、これらの差異を解消する概念モデルをロボット開発に展開することを目指す。
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