研究概要 |
複数システムからのヘテロな情報を統合し,柔軟な情報創成を可能とさせる総体システムとして能動的触覚かある.そこでは,接触する事により生じる皮膚感覚に手指の位置,動き,運動方向の感覚が加わり,その総体として認知が成立している.また,手指の動か仕方(触運動)により,認知までの正確さや早さか変わるため,触運動の制御も重要な要因である.このような能動的触覚システムが自己組織的に形成される事が脳の柔軟な情報創成を可能としていると考えられる.しかしながら,そのようなシステムの設計原理は解明されていない.本研究課題は触運動,刺激受容体,運動制御回路からなるヘテロなシステムの情報を統合して実際に触対象を検知する数理モデルを設計し,情報統合するためのコミュニケーション様式の数理的解明を目指す. 本年度は能動的触覚システムを数理的側面から理解するために,能動的触覚モデリングに主眼を置いた.モデリングは微視的レベルからシステムレベルと様々な階層でのモデルが考えられる.本年度は内部ニューロンと触運動制御を司る運動ニューロン,受容器集団から情報を受け取る感覚ニューロンなる極力簡略したマクロスコヒックな数理モデルを構成した.素子として興奮性力学の定性的側面を保持したセル・オートマトンを用いた.ニューラル網をマルコフ連鎖モンテカルロ法に与えられた機能を創出する能動的触覚システムの設計に成功し,触対象検知する幾つかの触運動モードが得られた.今後の課題である触運動とニューロン発火との関係性,触対象認知アルゴリズム及びロジック,外界認知するダイナミクスの形成過程などの数理的解明は能動的な認知過程を理解する上で重要と考える.
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