研究概要 |
本研究課題の2年度目に当たる本年度には,まず,樹状突起上の膜特性分布を推定する統計的手法を深化させるための研究を遂行した.空間的構造を考慮した樹状突起の数理モデルへ適用可能な統計学的手法を構築し,樹状突起に不均一に分布する膜抵抗の空間分布を推定する手法を構成した.さらに,不連続性を示す膜特性の空間分布をもつ樹状突起に対しても適用可能な推定法を考案し,膜特性のヘテロ性における変化点を検出することが可能な方法論を構築し,提案アルゴリズムを用いることにより,予め,膜特性が従う候補の分布関数が得られない場合でも,膜特性の空間分布を推定可能であることを示した.これらの研究により,樹状突起におけるヘテロ性を推定するための統計学的な方法論の構築に成功した.本研究課題で構築された樹状突起におけるヘテロ性を推定するための統計学的な方法論は,英文の学術論文として公表するとともに,国内外の学会において発表を行った.さらに,樹状突起に対する入力情報のヘテロ性と樹状突起膜特性が示すヘテロ性の関係性を明らかにするために,膜特性の不均一性を考慮したマルチコンパートメントモデルを用いた数値シミュレーション研究を遂行した.この成果は,東京大学における招待講演や国内学会において発表を行った.加えて,時系列データに含まれているヘテロ情報間の情報分離を実現する確率的時系列解析法の構築に成功した.提案モデルを用いた検証により,提案モデルは,雑音が重畳された環境下でも,ヘテロな情報として時系列データに含まれる緩やかに変化する成分とその他の成分を自動的に分離可能であることを示した.
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