ヒトや動物は未知の環境下にあっても、「環境との試行錯誤的なコミュニケーション」によって、生存するための「新しい知識」を確立することができる。このような柔軟な適応的行動の形成は、(1)「環境との試行錯誤的なコミュニケーション(刺激情報-行動選択-結果)を繰り返すことによって意義のある刺激情報(赤い色)を見出す過程」から、(2)「明示的に新しい知識を学習したあと、試行錯誤なしに適切な行動選択を行う過程」への遷移と見なすことができる。 本研究では「環境との試行錯誤的なコミュニケーションよって新しい知識を獲得」するときの神経メカニズムを明らかにするため、「試行錯誤を伴った視覚探索課題」を新たに開発してサルに訓練し、ルールが更新されるごとにサルが試行錯誤を行って新たな知識を学習する過程(特に前半の試行錯誤を伴う過程)で働く神経メカニズムを前頭連合野外側部で明らかにすることを目指す。 実験では「試行錯誤を伴った視覚探索課題」を訓練したサルを用いて、前頭連合野外側部(46野)からニューロン活動の記録を行った。コントロール実験として、目標刺激の色に対する選択性を明らかにする「色選択性テスト」、報酬サイズに対する依存性を明らかにする「報酬サイズ依存性テスト」を行った。
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