研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
22120507
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 正 京都大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (50311197)
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キーワード | 知性 / 試行錯誤 / 学習 / 適応 / サル / 前頭前野 / ニューロン活動 |
研究概要 |
ヒトや動物は未知の藁境下にあっても、「環境とのコミュニケーション」によって、生存するための「新しい知識」を確立することができる。例えば、初めて遭遇した未知の森で、さまざまな色の木の実を食べたとき、「赤色の実は美味しかったが、他の色の実は不味かった」という試行錯誤的な経験を繰り返せば、「赤い色→美味しい」という新しい知識を獲得して、最初から赤い木の実を探すようになるだろう。 このような柔軟な適応的行動の形成は、(1)「環境との試行錯誤的なコミュニケーション(刺激情報-行動選択-結果)を繰り返すことによって、問題解決のための新しい知識を見つける過程(試行錯誤による探索)」から、(2)「明示的に新しい知識を学習したあと、知識にもとづいて問題解決する過程(知識ベースによる探索)」への遷移と見なすことができる。 我々は「試行錯誤を伴った視覚探索課題」を開発することによって、試行錯誤による探索をサルに繰返し行わせることに成功した。前頭前野(背外側部)のニューロン活動は、現在遂行している探索方略の状態(試行錯誤探索or知識ベース探索)と、方略変換を行うべきタイミングを表現していた。さらに注目すべきことに、方略変換のタイミングを正しく見つけるために前頭前野ニューロンは,エラーが生じた要因によってエラーを「複数のエラータイプ」に区別し、その後の探索方略を決定していた。先行研究において、このような複数のエラータイプとそれにリンクした方略変換の神経機構は報告されていない。なお、研究成果の一部を英文雑誌で公表した(Fulimto et al. Robotics and Autonomous Systems, 2012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サル前頭前野から、当初予定していた(1)探索方略の状態(試行錯誤探索or知識ベース探索)と、(2)方略変換を行うべきタイミングを表現するニューロン活動だけでなく、(3)自己の行動の確からしさを表現するニューロン活動も見出した。このようなニューロン活動は、過去に報告されておらず、脳がもつ学習系を考えるにあたって重要な神経生理学的証拠を新たに与えるものである。
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今後の研究の推進方策 |
「試行錯誤を伴った視覚探索課題」において目標色が変わると、新しい目標色を試行錯誤によって探さなければならない。このような試行錯誤において、サルは同じ色刺激を何度も選んで失敗試行を連続させることはないことから、「試行錯誤で選択した色刺激と成功/失敗の履歴情報」を脳内に保存し、同じ誤りを繰り返さないようにしていると考えられる。このような「環境とのコミュニケーション履歴情報」が脳内で保存されている可能性を調べるため、強い色選択性を示すニューロン群が存在する前頭前野腹外側部から記録することを考える。
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