本研究は、意思決定時における探索行動、およびその時の神経活動を解析することによって、情報探索と利用の神経機構を明らかにする事を目的とする。 第1に、行った行動や選択した対象とその結果得られる報酬との関係を学習する課題を2頭の動物に訓練させたときの学習戦略行動、およびその神経活動について解析を行った。この研究では、学習行動戦略を複数の単純な強化学習モデルの切り替えによって説明する場合と、単一の複雑な強化学習モデルによる説明を試みた。両モデルとも動物の選択行動を予測できるものの、その予測性能はセッション毎に異なっていた。今後、より大きなクラスのモデル群から最適なモデルを行動データに基づいて抽出させる手法について検討する。第2に、ヒトが複数の商品から1つの商品を選択する嗜好に関する行動実験を行った。4つ提示される商品画像から1つの商品を選択させる課題の前に、事前アンケートによる商品の事前知識と、ギャンブル課題によるリスク指向性をあらかじめ測定した。その結果、リスク志向の高い被験者と低い被験者で、より知識の無い自分にとってより新規な商品を選択する傾向に違いがみられた。ヒトは行動の結果の不確実性が高い選択肢を避ける「リスク回避」行動を一般的には取るが、この傾向が弱いヒトほど、より新規な商品を選択する傾向が強いことがわかる。得られる報酬(金銭)と確率との関係で示唆されるリスク指向性が、商品配選択による「新しもの好き」と一致している事を示唆している。このことは、リスク指向的行動が、単なる衝動性や無謀な行動ではなく、より新しい情報を得るための行動と一致する可能性を示唆している。
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