研究概要 |
シンボルと感覚運動情報の統合による対話では,言語表現から身体運動の生成・修正を行うプロセスと,身体運動を言語表現で説明するプロセスの統合を可能とする計算モデルが必要となる.そのため,研究代表者が従来までに開発してきたミメシスモデルを利用し,ある二つの動作の間の差異を位相空間上のベクトルとして表現し,そのベクトルと言語的な表現を相互変換する手法を提案した.具体的にこの手法の有効性を確認するために,身体運動と言語表現の双方を用いてロボットが人間に対して動作の教示を行い,スポーツの初心者であるユーザをコーチングするというタスクに応用した.ロボットエージェントが行う手本動作を見習ってユーザが動作を行い,その動作に含まれる手本とは異なる動作成分を位相空間上のベクトルに変換し,そのベクトルの長さを「もっと」や「ちょっと」という修正度合いを表す言語表現の生成に対応させた.さらにユーザに対して再び動作を提示する際に,異なっていた動作成分を矯正するように動作を強調し,その強調の度合いをベクトルの長さと対応させる手法をとった.これにより,「もっとこのような動作をして下さい」と表現をしながらロボットが実演によって教示をするというプロセスが可能となった.12名の被験者実験を通じて,動作の強調による実演と言語表現を統合させる教示の場合に,ユーザが手本動作を習得する速度がもっとも速くなることを明らかにした. また一方で,関節角度情報による身体運動のみならず,関節トルクや床反力等の感覚情報についても言語化をしてコーチングに利用することを狙うため,身体運動パターンから感覚パターンを想起するモデルを上記のコーチングの手法に統合する手法を考案し,その実装を進めた.さらに,実際のヒューマノイドロボットがコーチングを行うための実験装置の開発・準備を進めた.
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