本研究計画は、行動中の大脳内の遷移状態を理解するために、マルチニューロン記録法を活かして、ラットが自らのタイミングで内発性運動を開始する瞬間に、海馬や大脳皮質ではどのような神経細胞の集団活動の変化がみられるのか、さらには両領域間で表現される情報に何らかの相互作用がみられるのかを生理学的かつ理論的見地から解析することを目指すものである。初年度は、オペラント学習により内発性および外発性運動課題を繰り返す行動実験系の確立を目指した。我々が以前開発した従来法では、内発性の運動課題を頭部固定ラットに学習させるのに熟達した実験者でも約2週間を要していた。今回、ラットにとって自然な前肢運動となるようにレバー操作部分に数々の改良を施して、まず外発性の運動課題を学習させたところ、訓練期間がわずか3日間と大幅に短縮することができた。さらに、外発性運動課題を学習したラットに、内発性運動と外発性運動をランダムに遂行させる課題を課したところ、数時間以内に追加学習することが判明した(特許出願準備中)。現在は、このような内発性および外発性運動を遂行するラットを対象にして、一次運動野に2シャンク4テトロード配列型の16chシリコンプローブを挿入するマルチニューロン記録実験を実施している。また、マルチニューロン記録の解析のために、理論系研究者の酒井裕博士(B01G2班)とすでに緊密な共同研究体制を築いており、スパイク・ソーティングやその後の各種解析を円滑に実施できる環境を整えつつある。
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