公募研究
細胞内アクチン骨格の再編成は、細胞の運動、遊走、形態変化など細胞の動的活動を支える重要な役割を担っている。アクチン骨格は細胞内ではF-アクチンと多様な結合蛋白質との過渡的な複合体として存在し、この複合体形成により重合・脱重合や3次元構築が時空間的に制御されることによって、細胞運動や形態形成等の動的な細胞機能が実現される。本研究では、アクチン繊維の重合・脱重合やアクチン結合蛋白質との結合ダイナミクスを過渡的複合体形成ととらえ、これらを生細胞で可視化・定量化し、アクチン骨格の動的作用機構と細胞運動、形態形成における機能を解明することを目的として研究を行い、以下の結果を得た。生細胞内におけるG-アクチンの濃度変化を可視化、定量化するイメージング技術s-FDAP法を開発し、本法を用いて、アクチン重合阻害剤であるLatrunculinによる生細胞内アクチン単量体濃度変化を測定し、ニューレグリン刺激後に形成されるラメリポディアの退縮と同調して、数分以内に細胞内アクチン単量体濃度が上昇することを明らかにした。また、LIMキナーゼによるコフィリンの不活性化は、細胞内アクチン単量体濃度の減少を引き起こし、刺激依存的なアクチンの重合とラメリポディア形成を抑制することを見出した。また、コフィリンとアクチンの結合を可視化する蛍光プローブを作製し、この結合を阻害する低分子化合物を同定することに成功した。また、多点FDAP法の開発にも成功し、細胞内のアクチン単量体濃度の空間分布の測定にも成功した。これらの手法の活用により、これまで定量的解析がなされていなかった生細胞内におけるG-アクチンとアクチン結合蛋白質の過渡的複合体形成の定量的解析が可能となった。
2: おおむね順調に進展している
生細胞内のアクチン単量体濃度の時間的、空間的変化を解析するイメージング技術、連続FDAP法と多点FDAP法の開発に成功し、細胞内のアクチンとアクチン結合蛋白質の過渡的複合体形成を定量化することができるようになったので、おおむね順調に進展していると自己評価した。
今後は、連続FDAP法や多点FDAP法をアクチン結合蛋白質や他の細胞骨格、細胞膜結合因子に応用すること、また、本法で得られた結果に基づいて、細胞運動、形態形成、極性形成におけるアクチン過渡的複合体形成の機能を解明することが今後推進すべき課題である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (12件) 備考 (1件)
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http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/mizuno_lab/