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2011 年度 実績報告書

転写を制御する核内糖修飾シグナルの試験管内解析

公募研究

研究領域過渡的複合体が関わる生命現象の統合的理解-生理的準安定状態を捉える新技術-
研究課題/領域番号 22121502
研究機関東京大学

研究代表者

藤木 亮次  東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (40534516)

キーワード転写制御 / クロマチン / 糖修飾
研究概要

本研究では、生化学的な精製手法およびリコンビナントタンパク質を用いた試験管内反応系を駆使し、核内糖(GlcNAc)修飾シグナルの作用点を明らかにすることを目的としている。まず、新しい「核内糖タンパク質」を探索するため、抗0-GlcNAc化セリン/トレオニン認識抗体(RL2)を用いたアフィニティー精製をおこなった。液体クロマトグラフィー-質量分析計によって解析した結果、全284因子の同定に成功した。これらの中から、今までに知られていなかったヒストンタンパク質のGlcNAc修飾に着目した。さらに、リコンビナント糖転移酵素(OGT)を使ったin vitro GlcNAc修飾系を活用し、ヒストンH2Bタンパク質上のO-GlcNAc化部位を電子伝達解離(ETD)質量分析計で同定することに成功した。
ヒストンタンパク質の新たな翻訳後修飾という性質上、これがゲノム上のどのような遺伝子上に存在しているのかが最大の疑問となる。GlcNAc化ヒストンH2Bを特異的に認識するモノクローナル抗体を作出し、クロマチン免疫沈降-シーケンシング(ChIP-seq)法を行った。マイクロアレイによる遺伝子発現の解析結果とハイブリッドさせることにより、この修飾が転写の活発な遺伝子上に多く存在することをつきとめた。また、標的遺伝子の多くは代謝と関連していることが明らかとなり、これには糖尿病の発症と関係するGlycogen synthase kinase3β(GSK3β)遺伝子なども含まれていた。以上の結果から、この修飾が新しい遺伝子発現制御機構を介することによって、糖尿病をはじめとするメタボリックシンドロームの病態と深く関係する可能性を見出すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、生化学的な精製手法およびリコンビナントタンパク質を用いた試験管内反応系を駆使し、核内糖(GlcNAc)修飾シグナルの作用点を明らかにすることを目的としていた。これまでの研究を通じて、ヒストンがGlcNAc修飾され、この修飾は転写調節と密接な関係にあることを見出した。すなわち、糖修飾シグナルという観点から、クロマチン構造と転写制御という新しい作用点を見出すことができた。

今後の研究の推進方策

これまでの研究では、主に核内における糖修飾の基質に焦点を当てて研究を進めてきた。今後は糖転移酵素(OGT)による糖修飾制御の分子メカニズムにも注目し、解析を進めていきたい。具体的には、核内OGT複合体を精製・同定することにより、OGTを介する糖転移反応の素過程や機構を分子レベルで明らかにすることを目指したい。これによって細胞がグルコースに応答して遺伝子発現の調節を行う機構の一端をあきらかにすることができると考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] GlcNAcylation of histone H2B facilitates its monoubiquitination2011

    • 著者名/発表者名
      Fujiki R, Hashiba W, Sekine H, Yokoyama A, Chikanishi T, Ito S, Imai Y, Kim J, He HH, Igarashi K, Kanno J, Ohtake F, Kitagawa H, Roeder RG, Brown M, Kato S
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 480 ページ: 557-560

    • DOI

      10.1038/nature10656

    • 査読あり
  • [学会発表] GlcNAcylation of histone H2B in transcriptional regulation2012

    • 著者名/発表者名
      藤木亮次
    • 学会等名
      Keystone symposium
    • 発表場所
      Keystone, CO, USA
    • 年月日
      20120617-20120622

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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