研究概要 |
本年度は、IP3センサーとIP4センサーによる細胞内IP3、IP4動態の同時計測を目的とした。 I.化学修飾により作製したIP3センサーとIP4センサーによる同時計測 ダンシル基を用いて作製したIP3センサーとフルオレセインを用いて作製したIP4センサーの励起波長は、それぞれ380nmと480nmである。IP3センサーとIP4センサーをHeLa細胞に同時に取り込ませて、細胞にヒスタミン刺激を加え、励起波長を380nmと480nmにスイッチングし、発光を520nmで観測することによりIP3センサーとIP4センサーの発光を単一細胞で計測した。同時測定の結果から、ヒスタミン刺激によりIP3とIP4は同期した細胞内濃度変化を示すことがわかった。 II.IP3センサー・IP4センサーを使用した細胞内IP3・IP4動態の解析 細胞内ではアゴニスト刺激に応じて一過的にカルシウム濃度が上昇し、この上昇に応答してIP3・IP4濃度変化が起こるとともに、細胞膜上でPIP3が産生されることが示唆されている。カルシウムとPIP3,IP3,IP4の動態と細胞内においてカルシウム濃度が周期的に変動する「オシレーション」の相関を明らかにするため、カルシウムオシレーションとPIP3、動態との相関を解明するため、細胞内カルシウム濃度をfluo3で測定し、カルシウムイオンとIP3、カルシウムイオンとIP4の動態を同時測定した。これにより、『単一細胞内で複数のセカンドメッセンジャーを同時測定する方法』を確立した。 III.cpGFPを融合したGRP1-PHドメインを用いた細胞内で発現可能なIP4センサーの構築 前年度計画と同様に、スプリットPHドメインをcpGFPに挿入する方法でIP4センサーの構築及び蛍光評価を行った。PHドメインとcpGFP間のリンカー長を変化させることによりIP4結合に伴う蛍光強度が変化したが、リンカー長と蛍光強度の間には相関性はなかった。
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