公募研究
近年、タンパク質や核酸などの生体分子の認識能を活かした様々なバイオセンサーが開発され、細胞内の環境や相互作用の可視化への応用の期待が高まっている。しかし、センサー分子を細胞内へ導入する方法が無いために、その適用に制約がでる場合も多い。一方で、HIV-1Tat(48-60)ペプチドをはじめとしたアルギニンペプチドが細胞内へ効率的に移行する性質を利用し、これらをキャリアとして用いた細胞導入法が広く応用されている。近年我々は、さらに疎水性の対イオンを共存させることでペプチドの移行量が数倍から数十倍に向上することを見出した。この手法は、バイオセンサーの細胞内導入に威力を発揮し、細胞内可視化のための新しい検出系創出に非常に有用な方法であると考えられる。しかし、本手法において、カーゴが本来送達されるべき特定オルガネラへの送達効率が悪い場合が多い。そこで、改善方法として、キャリアペプチド自体が形質膜を通過後に特異的に目的オルガネラに集積する性質をもたせることができれば、カーゴ分子が細胞内で働くべき場所に到達させることが可能になる。我々は抗菌活性を有する人工ペプチドのアミノ酸置換体が、高効率に形質膜を通過し、サイトゾル移行後にミトコンドリアに著しく集積する性質をもつペプチド(MTD)を新たに見出した。MTDペプチドは、比較的低濃度(数microM)で形質膜通過及びミトコンドリアに集積し、細胞毒性も低いことが明らかとなった。さらに、上記の対イオンを用いた細胞内移行への影響を調べた結果、疎水性対イオンを用いることでMTDペプチドの細胞内移行効率が格段に上昇し、数百nM程度の低濃度において数分といった短時間でペプチドが形質膜を効率的に通過し、ミトコンドリアに集積することも明らかとなった。現在、MTDペプチド/対イオンによるミトコンドリア送達法に関して、その機能性及びバイオセンサー運搬体としての応用性に関して研究を進めている。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件)
Journal of Controlled Release
巻: 149 ページ: 29-35
Biopolymers
巻: 94 ページ: 763-770
The International Journal of Biochemistry & Cell Biology
巻: 42 ページ: 1482-1488
Cell Transplantation
巻: 19 ページ: 901-909
Bioconjugate Chemistry
巻: 21 ページ: 2031-2037