研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
22H04446
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 一大 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (90433581)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 褐色脂肪細胞 / 寒冷適応 / 関連解析 / オセアニア / ベーリンジア |
研究実績の概要 |
アフリカ大陸の低緯度地域で数百万年にわたって進化を続けてきた人類にとって、高緯度帯の寒冷な気候はその拡散を阻む大きな障壁となっていたと考えられている。褐色脂肪細胞はミトコンドリアに富み、酸化的リン酸化を脱共役することで熱を産生する特殊な脂肪細胞で、ヒトでは鎖骨上窩部や脊柱周辺などの大血管周辺に局在している。褐色脂肪細胞は身体の深部に存在しており、高効率でエネルギーを熱に変換できることから、寒冷環境での体温維持に大きく寄与していると考えられている。さらに、褐色脂肪細胞での熱産生能には大きな個人差があり、これへの遺伝的素因の関与が示唆されている。本課題では、南北の出ユーラシア集団、すなわちベーリンジアを経由してアメリカ大陸へ移住した集団と南太平洋の海洋域に進出した集団で、褐色脂肪細胞での熱産生能が寒冷適応に関係した自然選択を受けた可能性を検証することを目標とした遺伝解析研究を実施した。両地域への拡散の中継地点ともいうべき東アジアのヒト集団500名程度を対象に、陽電子放出断層撮影―コンピューター断層撮影法、赤外線サーモグラフィー、呼気ガス分析法等の複数の手法で寒冷刺激後の褐色脂肪活性を測定、同時にゲノム試料の提供を受けることで、褐色脂肪活性の個人差に寄与するゲノム多型の検出を試みた。さらに、オセアニア集団でネアンデルタール人からの遺伝子流動の証拠が認められており、かつ肥満度等との関連が報告されているβ2アドレナリン受容体遺伝子について、いくつかの機能的多型を選抜し、熱産生能の個人差との関連解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定した数の資料収集が完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでで収集したゲノムDNAと表現型情報をもちいて、オセアニアとユーラシアの高緯度地域のヒト集団で寒冷適応に関係した自然選択をうけた可能性が報告されている一塩基多型等について、実際のヒト集団内での寒冷曝露化での熱参性能の個人差と関連しているか否かを調査する。
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