公募研究
本研究では、量子液晶特有の光機能性を探索すべく、量子スピン液晶である磁気スキルミオンに注目する。スキルミオンはスピンが渦状に配列し、それぞれのスピンが球面の立体角を張るというトポロジカルなスピン配列をしている磁気構造体である。この特殊なスピン配列を反映して、電子は巨大な実効磁場(創発磁場)を感じることになるため、スキルミオンは特異な電磁気応答を示す。例えば、スキルミオン形成に伴い、ホール効果は急峻に増大するような振る舞いを見せる(トポロジカルホール効果)。本研究ではこのアナロジーとして、固体中の創発磁場によって磁気光学応答も増大するのではないかという作業仮説のもと、磁気光学ファラデー・カー効果や磁性誘起第二次高調波などの幅広い磁気光学応答について、巨大効果の実現を目指す。まず初年度では、スキルミオン物質Gd2PdSi3における磁気光学カー効果の測定を行った。申請者の研究室では、中赤外から可視領域までの磁気光学測定系を組んでいたが、この測定のために新たに遠赤外領域の測定系の構築を行った。その結果、高エネルギー領域においては磁化に比例するような振る舞いが観測された一方で、遠赤外・中赤外領域においてはスキルミオン形成によるカー回転角の顕著な増大が観測された。これをもとに、この物質で観測されているトポロジカルホール効果との対応についても議論した。また、納入したレーザーを用いて、第二次高調波発生の測定系の立ち上げを行い、テストサンプルで磁性誘起第二次高調波発生の観測に成功している。今後これを用いてスキルミオン由来の効果を追求する。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定通り、スキルミオン由来の磁気光学効果の観測に成功し創発磁場が確かに光学応答にも強く影響していることを確認することに成功した。現在ではすでに論文の執筆を終え、投稿することができている。さらには、次年度行う予定であった第二次高調波発生の測定系を構築するところまで完了しており、計画以上に研究を遂行することができているといえる。
今年度は、前年度に立ち上げた測定系を用いることで、スキルミオン由来の第二次高調波発生の観測を目指す。また、前年度に観測したスキルミオン由来の磁気光学カー効果についても、他の様々な物質について測定を行うことで、より系統的な知見を得たい。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
npj Quantum Materials volume 7, 91 (2022).
巻: 7 ページ: 1-7
10.1038/s41535-022-00501-2
PNAS 119, e2122313119
巻: 119 ページ: 1-5
10.1073/pnas.2122313119