研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04475
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅場 智也 京都大学, 理学研究科, 特定准教授 (90909417)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超伝導 / 重い電子系 / 超格子 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子線エピタキシー(MBE)による重い電子3色超格子超伝導体のCeCoIn5/ YbCoIn5/ YbRhIn5を主として、空間反転対称性の破れた希土類超格子の超伝導ダイオード効果を検証し、超伝導研究の長年の課題であったヘリカル超伝導状態の制御をすることを目的とする。
初年度の研究では、CeCoIn5/YbCoIn5/YbRhIn5超格子を作製し、収束イオンビームFIBでパターニングした上で非相反成分R2ωを測定した。超格子作製には、10mm x 5mm のMgF2を基板に用い、その上に20nm程度のYbCoIn5をバッファー層として成長させ、その上に超格子 eCoIn5/YbCoIn5/YbRhIn5を数百nmほどエピタキシャル成長させた。その後、FIBでパターニングを行うことで試料サイズを幅10μm、長さ200μm程度に整形した。得られた試料を希釈冷凍機により100mK程度まで冷却し、面直磁場を印加した上で精密ロックインアンプで二倍高調波成分R2ω測定を行った。二倍高調波成分はSDEと密接に関係している。本年度の研究では特に温度T、磁場H、電流密度Jの3つのパラメータに焦点を当てた。その結果、高温では他の物質と同様の単ピークの非相反抵抗の磁場依存性が観測されたが、低温高磁場ではこのピークが抑制されていることがわかった。このピーク抑制が起きる温度・磁場領域は、これまでの上部臨界磁場と温度の相図から予測された低温高磁場相と概ね一致しており、この領域で新しい超伝導相が創発している可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、当初の予定通り、CeCoIn5/YbCoIn5/YbRhIn5超格子を作製し、収束イオンビームFIBでパターニングした上で非相反成分R2ωを測定するところまで完了することができた。さらに、試料を希釈冷凍機温度まで冷却し、二倍高調波成分R2ω測定を行った結果、低温高磁場で、新しい超伝導相が創発している可能性があることがわかった。以上のことから、本研究はおおむね順調な進捗状況であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は特に、非相反抵抗が磁場の角度にどう依存するかを調査することに主眼を置く。本研究で用いる超格子は非常に特異なd波超伝導体超格子であり、非相反成分がその超伝導ギャップ構造、特にノードの有無を反映している可能性がある。これを磁場方向依存性から探ることで、非相反効果と日従来型超伝導ギャップとの間のつながりを精査する。
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