本研究では、ニトロキシドラジカル(NR)液晶にスピン注入を行い、スピン拡散を観測することを目的として研究を進めてきた。本年度は、①NR部位と三重項色素部位を分子内に共存させた化合物の設計と合成と、②ミクロ相分離を起こすリオトロピック液晶を用いた各種材料の合成、③液晶中のレーザー発振の検出に関して、検討を行った。 ①ラジカル部位と三重項励起色素部位を分子内に共存させた化合物のラジカル-三重項対機構による光磁気効果を利用する戦略について、検討を行った。前年度に行った、ジフェニルPROXYLと、液晶性化合物と親和性の高い形状を持つベンジルを含む化合物の合成を行ったが、本年度は、前年度に委託合成を行った中間体を用いて、追加合成を達成した。 ②リオトロピック液晶の一種である超膨潤ラメラ相を用いて、銅ナノシートの合成と、それに続く酸化銅ナノ構造体の生成を確認した(雑誌論文として出版済)。また、同じ液晶相を鋳型として用いて合成するアモルファスアルミノケイ酸塩ナノシートの組成の制御に成功した(雑誌論文として出版済)。さらに、超膨潤ラメラ相を用いたナノシート合成を中心に、ナノシート合成法に関する総説を出版した(雑誌論文として出版済)。 ③液晶滴中のレーザー発振が励起光照射位置によってスイッチングすることを見出した(雑誌論文として出版済み)。ネマチック液晶中ではランダムレーザー発振とWGMレーザー発振が起こることが知られており、それらがエネルギーを取り合うことが予想されていた。本研究では、励起光照射位置により、これらの2つのレーザー発振の強度比が変化することがわかり、予想が正しいことを確かめた。
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