研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04479
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中島 正道 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (20724347)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 電子ネマティック状態 / ネマティックドメイン / 反射率測定 / ネマティック感受率 / 鉄系超伝導体 |
研究実績の概要 |
電子系の回転対称性が自発的に破れている電子ネマティック状態では、電子系の異方性に起因するドメイン構造の出現が期待される。電子ネマティック状態を深く理解するためには、ネマティックドメインの観測が重要である。それにより、単一ドメイン内の異方的電子状態の解明やドメインの制御に向けた研究が可能となる。本研究は、ネマティックドメインを可視化し、そのダイナミクスを観測することを目的としている。回転対称性の破れの検出に有効だと考えられる直線偏光した光を用いた反射率測定を行い、ドメイン構造の観測を目指す。 本年度は、光学測定システムの設計・構築を行った。ドメイン構造を可視化するためには、直交した二方向に直線偏光した光を用いて反射率の異方性を測定し、その位置依存性を調べることが必要である。光源からの光を二手に分け、一方は強度をモニターする参照光とし、もう一方は試料で反射させる。反射率の二次元マッピングを効率的に行うため、検出器としてCMOSカメラを使用することにした。ケーラー照明を用いた偏光導入光学系は出来上がっており、あとは試料からCMOSカメラまでの光学系を組めば、測定が可能となる。最初に測定することを考えているのは、ネマティックドメインの観測が報告されている鉄系超伝導体BaFe2(As1-xPx)2の最適組成試料(x~0.3)である。既に測定用の単結晶試料の準備はできている。次年度は、光学系の残りの部分を完成させ、試料測定に進む。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時には、本年度の間に光学測定システムの構築を終わらせることを想定していたが、現状ではまだ完成していない。試料からCMOSカメラに至るまでの光学系の構築がまだ残っている。残りの部分をなるべく早く完成させ、テスト測定可能な状況に持っていく必要がある。CMOSカメラについては、当初検討していたよりもスペックの良いものを導入できたため、高精度測定が実現できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、空間分解可能な精密反射率測定システムの構築に取り組む。測定ができるようになった段階で、ネマティックドメインの観測が報告されている鉄系超伝導体BaFe2(As1-xPx)2の最適組成試料(x~0.3)に対して測定を行う。直交する二方向の直線偏光における反射率の差は、電子ネマティック秩序のオーダーパラメータに対応している。オーダーパラメータの二次元マッピングを行い、その温度依存性を調べる。測定系を調整し、5マイクロメートルの空間分解能と0.01%以下の反射率の異方性を観測可能な測定精度を達成する。
|