(1) 2022年度は170Kでフェリ磁性相転移を起こすCoV2O4と50Kで正方晶(a>c)への構造相転移とフェリ磁性転移を起こすMnV2O4との混晶系Co1-xMnxV2O4を作製し、TN以下での正方晶歪は小さい(ネマティック)が、xが大きくなると40K付近で軌道整列由来の正方晶への構造相転移が起こることを見出した。今年度はCoV2O4と低温で正方晶(c>a)への構造相転移を起こすFeV2O4の混晶系Co1-xFexV2O4を作製し、歪測定と磁化測定から構造と磁性の関係を調べた。その結果、TN以下での正方晶歪がxとともに連続的に大きくなる一方、xが大きくなると50K付近で軌道整列由来の構造相転移が起きることを見出した。すなわち、これらの系ではいずれも、TN以下でのスピン軌道結合による正方晶歪とVの軌道整列による正方晶歪が独立に起こることが分かった。 2) 2次元磁性体であるLa5Mo4O16は200Kに面内でフェリ磁性,面間で反強磁性であるが,1T以下の弱磁場で面間方向が強磁性にメタ磁性転移する。このメタ磁性転移に伴うスローダイナミクスについて、特にMoサイトをMnで置換した単結晶について調べた結果、磁化の時間依存性の温度・磁場依存性が、核生成-核成長ダイナミクスによって統一的に理解でき、表面張力は面内の磁気的相互作用に由来すること、また定量的な比較によって、核の表面には磁壁構造ができていることを明らかにした。さらに、置換を行わない母物質La5Mo4O16においては、70K以下で起こる軌道秩序に由来する特異なダイナミクスの温度依存性が現れることを見出した。
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