研究領域 | 変わりゆく気候系における中緯度大気海洋相互作用hotspot |
研究課題/領域番号 |
22H04491
|
研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
平田 英隆 立正大学, データサイエンス学部, 専任講師 (30808499)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 温帯低気圧 / 豪雨 / 暴風 / 海面水温・気温上昇 |
研究実績の概要 |
今年度は、まず、日本周辺の海面水温の昇温の実態を把握するために、複数の海面水温データセットの解析を行った。その結果は、日本の東方海上の黒潮続流域において、近年、特に大きな海面水温の昇温が生じていることを示した。海面高度の分析などから、黒潮続流の軸が北へシフトすることが、この海面水温の上昇へ大きく寄与していることがわかった。 上述の日本東方における特徴的な海面水温上昇が温帯低気圧に伴って発生した顕著現象へ与える影響について調査するために、領域雲解像モデルを用いて数値実験を実施した。2020年1月に温帯低気圧の通過に伴って茨城県で発生した記録的な豪雨と2021年2月に黒潮続流域で生じた低気圧の非常に急激な発達に焦点を当てた。 2020年1月の茨城県の豪雨は、低気圧に伴う東風が黒潮続流域から陸上へ吹き込む環境において発生した。豪雨の再現実験は、この環境場および観測された降水量の変動をよく再現した。一方で、日本東方の海面水温の正偏差を取り除いた実験では、再現実験と比較して、降水量が4割程度、低下した。再現実験と感度実験の比較から、正の海面水温偏差が水蒸気や熱の供給を増加させることによって、豪雨の発生に適した状態の形成に一部寄与したことが示唆された。 再現実験は、2021年2月に発生した続流域における低気圧の急発達を精度よくシミュレートした。一方で、正の海面水温偏差を除去した数値実験においては、発達が抑制された。再現実験と感度実験との間で、中心気圧の変化に基づく発達率には1割程度の差が生じた。両実験の結果から、海面水温の正偏差が海面からの水蒸気や熱の供給を通じて、低気圧の急発達へ部分的に関与したと考えられる。 このように、本研究から日本東方海上の海面水温の上昇が低気圧に伴う顕著現象へ影響していることが明らかになってきた。これらの研究成果は、気象学会秋季大会等で報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海面水温のデータ分析を通じて、日本周辺における特徴的な海面水温の昇温を特定することができた。また、この昇温が温帯低気圧に伴う顕著現象へ与える影響について、数値実験を通じて定量的に評価することができた。さらに、数値実験の結果を分析することで、海面水温偏差が顕著現象へ与える影響に関わるメカニズムについても理解を深めることができた。おおむね計画通り、研究を遂行していることから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、まず、大気安定度や力学解析などを通じて、日本東方海上の海面水温の上昇が温帯低気圧に伴う顕著現象へ与える影響に関わるメカニズムに対する理解を深める。そして、本研究で得られた研究成果を、論文にまとめる作業を行う。 さらに、日本海における海面水温の昇温が、温帯低気圧に伴う顕著現象へ与える影響についても数値実験を利用して調査を行う予定である。
|