昨年度の調査により、日本の東方海上の黒潮続流域において、近年、特に大きな海面水温の昇温が生じており、この昇温が2020年1月に温帯低気圧の通過に伴って茨城県で発生した記録的な豪雨や2021年2月に黒潮続流域で生じた低気圧の非常に急激な発達へ部分的に影響したことが示唆された。本年度はまず、昨年度に得られた結果の信頼性を検証するために、領域雲解像モデルを利用して各イベントの再現実験および続流域における高海面水温偏差の除去実験(海面水温感度実験)を、それぞれ7つの異なる初期値を用いて実施した。これらの実験から得られた結果を統計解析したところ、2つの実験群(再現実験群と海面水温感度実験群)の間には統計的に有意な差があることがわかった。これらの調査から、近年の日本の東方海上の海面水温の昇温が、低気圧に伴う豪雨や低気圧発達の強化へ寄与したことが裏付けられた。 さらに、日本の東方海上の海面水温の昇温が他の顕著現象へ与える影響について調査するために、2023年9月に千葉県で発生した記録的な豪雨イベントについても再現実験および海面水温感度実験を実施することで調査を行った。再現実験と比較して、海面水温感度実験では、千葉県付近の降水が100 mm以上抑制された。さらに、日本東方海上の海面水温偏差を系統的に変えた数値実験から得られた結果は、日本東方海上の海面水温偏差と千葉県付近の降水量には、概ね正の線形関係があることを示した。これらの結果は、日本東方海上の昇温がこの豪雨にも影響することを示す。 以上のように、本研究課題を通じて、日本東方海上の顕著な海面水温の上昇が、近年の豪雨や低気圧発達に影響したことが示された。これらの研究成果は、28th General Assembly of the International Union of Geodesy and Geophysics等で報告を行った。
|