研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04495
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森川 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10632416)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 収束電子回折 / ナノ電子プローブ / 局所構造解析 / 分極回転 / 電荷密度分布解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、機能コアのうち特に強誘電体デバイスの動作を支配している分極ドメイン壁に焦点を当て、ナノ電子プローブを用いた局所構造解析から、分極回転の電子密度分布解析による直接観測を目指している。 観察ターゲットとして、汎用強誘電体であるBaTiO3を選んだ。しかしノンドープのBaTiO3は電子線照射により容易にドメイン壁が動いてしまうために、微細構造解析には適さない。そこで様々な遷移金属元素を微量ドープした試料を用いて、最適な試料を探索した。結果として、電子線照射に耐えうる90度の分極ドメイン壁を見出し、詳細なデータ取得に成功した。特に分極ドメイン壁直上で撮影されたパターンは、分極の回転方向に依存した強度分布を示した。これは分極回転を電子回折図形の強度分布として直接観察した初めての例である。またこの強度変化から、分極ドメイン壁は約5 nmと推測された。一方、ドメイン壁近傍において、バルクの強度分布からの差異を検出し、その領域が先行理論研究とおおむね合致することが分かった。 分極ドメイン壁を含んだ超構造の解析のために、研究グループで開発している多重散乱計算コードMBFITを改良し、電子プローブ位置を変化させた回折図形のシミュレーションに成功し、実験の強度分布の傾向を再現することに成功した。今後、原子位置や結晶構造因子などのパラメータ精密化による分極回転領域における電子密度分布解析を試みる。 また、領域内における共同研究を進めており、分極ドメイン境界を含んだ超構造の電子密度分布計算とそれを用いた実験データ解析へのフィードバックの導入を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、90度の分極ドメイン壁における詳細なデータ取得に成功している。また、多重散乱を考慮したシミュレーションによる実験データの再現も実現し、電子密度分布解析の実現に向けて進展している。一方で、計画時においてはマルチスライス法による解析を検討していたものの、逆空間の精度の良い解析には不向きであることが分かり、ブロッホ法による解析ソフトウェアの改良により解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
より高精度な実験データ取得のために、試料ドリフトや試料汚染の低減に向けた改良を継続する。また、実験と計算による強度の定量比較による、原子位置や結晶構造因子などのパラメータ精密化の実現を目指す。すでに現行において原理的には解析可能な状況であるが、パラメータ数が多大であるために解析は非現実的である。ここでいかに物理的根拠をもってパラメータ数を低減させるかが課題である。また、従来の手法においては各パラメータ間の相関や、非線形最小二乗法での局所解への拘束が問題となっており、今後ベイズ推定のルーチンの導入を行い、解の導出を目指す。
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