研究実績の概要 |
リン酸八カルシウム(OCP)ヒトの骨や歯を構成する無機主成分であるヒドロキシアパタイトの前駆体であると考えられている。OCPは人工骨として利用できるほど生体との高い親和性を有するセラミックス生体材料である。また、OCPは層状構造を持ち、層間にカルボン酸イオンを導入することができる。この性質を利用して、研究代表者はこれまでにOCPに蛍光性カルボン酸を導入することによって生体適合性に優れる蛍光体の作製に成功した。しかしながら、得られた蛍光体粒子のサイズは数マイクロメートルであり、蛍光バイオイメージングプローブとして利用するにはサイズが大きすぎることが課題であった。 そこで、2022年度の研究においては材料合成法を抜本的に見直し、合成プロセスを従来の溶解-析出法から沈殿法に変更し、高過飽和度環境で短時間で合成を完了させる合成反応系とすることによって蛍光性カルボン酸を導入したOCPナノ粒子の合成に成功した。しかし、得られた蛍光性OCPナノ粒子の蛍光波長は短波長であり、バイオイメージングプローブとしては不向きであることが分かった。 そこで2023年度の研究においてはOCPに導入するカルボン酸種を変更し、得られた材料の蛍光特性を調べた。その結果、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸およびp-フェニレンジカルボン酸では依然として蛍光波長は短波長であったものの、4-(カルボキシメチル)安息香酸を導入したOCPにおいては約610nmの蛍光を示した。この結果は、従来の蛍光性OCPの蛍光波長の最大値(450nm)を大幅に超える長波長化に成功しており、蛍光性OCPのバイオイメージングプローブへの応用に向けて大きく前進する結果を得られたものと言える。
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