研究実績の概要 |
有機ナノテンプレートを利用したり,新たに液中プラズマ法を導入することにより1 nm~数十 nmまでの様々なサイズのAgナノ粒子を合成する方法論を確立した.特に液中プラズマ法によるAgナノ粒子の合成においては,液中プラズマ放電システム(石英ガラス製反応容器,金属ロッド電極,パルス発生電源から構成)を新たに構築し,プラズマ放電条件(パルス電圧,パルス幅,周波数)や,水溶液の導電率を制御しながら,電極から銀などの金属ナノ粒子を定常的に生成させるための条件を探索し整理した.有機ナノテンプレートや液中プラズマ法を用いて合成した銀ナノ粒子助触媒を酸化ガリウム上に安定化させた光触媒(Ag/Ga2O3)を調製し,この光触媒を用いて人工光合成反応(二酸化炭素の水による還元反応)を進行させ,CO, H2, O2を生成させることに成功した.また調製した光触媒を高空間分解電子顕微鏡を用いて観察し,Ag粒子,Ag-Ga2O3界面,Ag粒子近傍のGa2O3とサイトごとに明確に区別できることを確認した. 一方,反応基質(水やCO2分子)と光触媒最表面活性サイト(機能コア)との相互作用を観察するための複合型分光測定システムの設計に着手した.小型の真空チャンバーに試料ホルダー(試料の加熱可能)や真空ポンプを取り付けたものであり,真空排気,反応ガスの導入,光照射といった反応環境の再現が可能であるシステムを構築しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
前年度から引き続き,サイズ制御された金属ナノ粒子助触媒(主に銀ナノ粒子助触媒)の合成と光触媒の調製,人工光合成反応(二酸化炭素の水による還元反応)実験を実施する.また2023年度には,複合型分光測定システムを構築し,これを放射光実験施設のビームラインに取り付ける予定である.このシステムを用いて,Ag/Ga2O3光触媒に反応基質(水やCO2分子)を導入したり光照射をしながら,XAFS測定をし解析することで,反応分子と相互作用する活性サイトを同定する. 一方,Ga2O3の多形に注目し,異なる結晶構造(α, β, γ, ɛ相など)を,α/β, β/γなど様々な組み合わせで接合する助触媒非担持型光触媒を設計したい.Ag/Ga2O3光触媒の活性サイトの構造・電子状態を模倣するように,Ga2O3中に結晶欠陥を導入することで,水による二酸化炭素還元反応において,高い活性と耐久性を示す新規光触媒の創製を目指す.更にSTEM/EELS分析によって,異なるGa2O3結晶粒の界面に形成された欠陥を可視化したり,反応中の複合的分光測定によって反応に伴う欠陥構造や反応メカニズムの変化を追跡したい.これらの測定分析法を本研究領域において提案される固体材料中の「機能コア」物性分析に応用するだけでなく,材料中の様々な結晶欠陥を応用した新奇熱触媒・光触媒の創製に関する研究へと展開するなど,多くの研究者との共同研究を強力に推進したい.
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