公募研究
本研究の目的は、原子構造とスペクトルが共に画像データとして表現できることに着目し、深層学習 に基づく画像生成・画像認識アルゴリズムを適用して、スペクトルから局所原子配列・局所電子状 態の関係を(構造記述子を介することなく)直接予測できる新しい機械学習法を開発することである。この目的を達成するために、1) 局所原子構造からスペクトルを予測する画像生成モデルの構築、2) スペクトルから機能コアを予測する画像認識モデルの構築の2つのサブテーマに取り組む。2022年度において、1) に関しては画像生成アルゴリズムの一種である条件付き敵対的生成ネットワーク (cGAN) の適用を試みた。励起の中心となる元素から3オングストロームの範囲の立方体を考え、x,y,z軸方向にそれぞれ32個の等間隔のメッシュに分割して原子がメッシュ内に存在するかどうかをデジタルデータとして表現することで、原子構造を画像データとして取り扱った。cGANモデルの構築には成功したが、その予測精度は十分ではなく、更なる検討が必要である。2) については、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の適用を試みた。第一段階として、動径分布関数や orbital-field matrix と呼ばれる局所構造や構成原子の電子配置に関する情報を含んだ構造記述子の予測を行った。スペクトルから局所構造に関する情報を直接抽出することが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
機械学習モデルの作成に必要なデータ収集は既に完了している。サブテーマ1) 局所原子構造からスペクトルを予測する画像生成モデルの構築に関しては、当初計画していたcGANにより、3次元の原子配列から直接スペクトル形状を予測するモデルが作成できるという確信を得られる結果が出ている。課題は予測精度の向上であるが、入力データの高解像度化と計算量の工夫をすることで可能になると考えられる。2) スペクトルから機能コアを予測する画像認識モデルの構築畳み込みニューラルネットワークによってスペクトルから局所原子構造を抽出するモデルを作成することに成功した。一方で、3次元の原子配列を直接予測するモデルについては十分な精度が得られていないが、ネットワーク構成を最適化することで精度の向上が見込める。
サブテーマ1) 局所原子構造からスペクトルを予測する画像生成モデルの構築に関しては、原子構造を表現する画像データ作成の際のメッシュ数を増加(高解像度化)させることで、精度の向上を狙う。3次元空間の分割メッシュ数を増加させると必要なメモリサイズが急激に増大するため、次元圧縮アルゴリズムを事前に適用するなどの工夫が必要となる。サブテーマ2) スペクトルから機能コアを予測する画像認識モデルの構築については、原子構造を表現する画像データを直接予測するモデルの構築を試みる。これにより、スペクトルから3次元的な原子配列を直接抽出することが可能になると期待される。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
Materials Transactions
巻: NA ページ: accepted
10.2320/matertrans.MT-MG2022021
10.2320/matertrans.MT-MG2022005
Chemistry of Materials
巻: 34 ページ: 10973-10981
10.1021/acs.chemmater.2c02986
https://www.omu.ac.jp/eng/cms_lab/