研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04515
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
吉田 要 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (00397522)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゼオライト / 触媒 / 構造解析 / イオン交換 / 吸着分子 |
研究実績の概要 |
ゼオライトは結晶構造としてナノサイズで規定された径の細孔を形成する共有結合結晶である。ゼオライトの骨格構造はシリカの四面体構造を基本としているが、その一部が価数の異なるアルミナで置き換わっておりアニオン部位を有する特徴を持っている。そうした共有結合骨格内のアニオンサイトに対して、比較的自由なカチオンが含まれることとなり、これらによりゼオライトに各種触媒能が付与される。触媒能が付与されるカチオンとしては固体酸として機能するプロトンや遷移金属カチオン類である。ゼオライトを触媒として用いる場合はナノ細孔といった特殊な空間が反応場となるため、反応種となる吸着分子とカチオンとの構造関係が非常に重要である。しかしこうした反応サイトは周期的な細孔全てを閉めているわけではなく部分的に占有された状態であるため、その構造解析には困難が伴う。そのため本研究では、環境透過型電子顕微鏡といった特殊な電子顕微鏡を用いて、ガス環境下でのゼオライト構造解析を行うことを目的としている。特にゼオライトは電子線照射に対する耐性が低いため、電子顕微鏡による構造解析のレベルが大きく制限されており、低照射下観察といった特別な技術を必要とする。近年低照射下観察の技術向上により、ゼオライト細孔内カチオンの直接観察が実現されてきているが、吸着ガス分子の直接観察事例は報告されていない。そのため本研究ではゼオライトの材料化学といった観点に加え、電子顕微鏡観察技術の向上といった面も大きく含まれていることとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度においては、環境電子顕微鏡観察を行うための試料の前処理として電子顕微鏡外で細孔からの脱ガスおよび任意の分子吸着を行う特殊な真空チャンバーの整備を進めた。しかし部品調達において想定以上の時間を有したため、その完成が年度末近くとなってしまい研究に遅れがし生じた。 一方で新学術領域内での横断的な連携研究は順調に進められており、加熱条件での構造解析をはじめとした各種その場電子顕微鏡観察解析により領域内の研究に貢献している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに電子顕微鏡による高分解能構造解析を行なってきた銅置換型ゼオライト類縁体について、ガス環境下での環境電子顕微鏡観察を行なっていく。こうした実験においては比較となるための脱ガス処理も同様に重要であり、既に完成した試料前処理チャンバーを用いて試料加工の最適化も同時に進めていく。吸着分子の直接観察が可能となった際には理論計算のグループとの連携についても検討を行い、触媒反応解明に向けた定量的な解釈の構築を目指す。
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