触媒カチオン担持型ゼオライトにおける触媒能発現メカニズムの解明を目的に、環境制御型電子顕微鏡を用いた原子スケールその場観察を行ってきた。ゼオライトは多孔性セラミックスの1種であり、共有結合結晶内に結晶構造として規定された径での細孔を形成する。こうした細孔内にはある程度交換可能なカウンターカチオンが存在しており、これに触媒能を有するカチオンへと置換することで分子選択性をもった触媒が形成される。また解析装置として用いる環境制御型電子顕微鏡はガス環境に置かれた試料のその場観察を可能とする特殊な装置であり、反応分子が存在する中で原子スケールでの構造観察が期待される。本研究内ではゼオライト触媒との化学的相互作用が考えられる複数種のガス環境で高分解能観察を試みてきたが、電子線照射によるコンタミ成分の蓄積などが課題となり実現には至らなかった。一方で触媒能を発現するサイトと考えられるカチオンについては直接観察が可能となり、イオン交換におけるサイトの選択性について特殊なメカニズムを明らかにすることができた。ゼオライトは電子線照射への耐性が低く、構造を維持して高分解能観察を行うには電子線照射を低減する観察条件の最適化が必要である。典型元素においてイオンの価数が異なるものをイオン交換してそのサイトを明らかにしたところ、価数の影響よりイオン径と細孔内径とのマッチングが吸着サイトの選択性に重要であることが明らかとなった。
|