研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04529
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
堤 浩 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70398105)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ペプチド / 自己集合 / 遷移金属イオン / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
自然界では、水圏環境において、タンパク質や脂質、色素、金属イオンなどの有機・無機分子群がナノ〜マイクロメートルサイズで精密に集積化した構造体が動的・自律的に構築され、物質変換やエネルギー産生などのさまざまな機能を発現している。水の存在下で任意の機能を発現する環境調和材料の開発には、水圏環境で種々の分子素子をナノレベルで組み上げる手法が必要である。本研究では、申請者は遷移金属イオンとの配位結合を鍵となる駆動力として水圏環境で自己集合化し、さまざまなナノ構造を形成する超分子ペプチド群を開発することを目的とした。 今年度は、種々の遷移金属イオンと配位結合が可能なイミノ二酢酸(Ida)を導入した自己集合化ペプチドu(XX-C5-Ida)2の合成を行った。Xに種々の疎水性アミノ酸を配置した自己集合化ペプチドを液相合成により合成することに成功した。また、合成した自己集合化ペプチドu(XX-C5-Ida)2と種々の遷移金属イオンを相互作用させ、円二色性スペクトル測定によりペプチドの二次構造を解析した。合成したペプチドは二価の遷移金属イオンに応答してβシート構造へと自己集合することを明らかにした。さらに、透過型電子顕微鏡観察の結果、二価の遷移金属イオン存在下でテープ状やリボン状のナノ構造へと自己集合することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、「イミノ二酢酸(Ida)を導入した自己集合化ペプチドライブラリu(XX-C5-Ida)2の合成と遷移金属イオン応答性および自己集合構造の解析」を計画していた。疎水性アミノ酸Xとして、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンを配置したペプチドを液相合成により合成することができた。合成したペプチドについて、ZnCl2、CuCl2、NiCl2、CoCl2、FeCl2、FeCl3、MnCl2と相互作用させ、円二色性スペクトル測定によりペプチドの二次構造の変化を解析した結果、FeCl3を除く二価の遷移金属イオンに応答してβシート構造へと自己集合することを明らかにすることができた。また、βシート構造に結合して蛍光強度が増大する色素であるチオフラビンTを用いて蛍光スペクトルを測定した結果、二価の遷移金属イオンの存在下で蛍光強度の増大が観測され、遷移金属イオンに応答してβシート構造へと自己集合することを支持する結果が得られた。さらに、透過型電子顕微鏡観察によりナノ構造を解析した結果、FeCl3を除く二価の遷移金属イオンの存在下でテープ状やリボン状のナノ構造へと自己集合することが明らかとなった。以上より、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に引き続き、「イミノ二酢酸(Ida)を導入した自己集合化ペプチドライブラリの合成と遷移金属イオン応答性および自己集合構造の解析」を実施する。令和4年度に合成が終了できなかったペプチドの合成、および遷移金属イオン応答性と自己集合構造の解析を完遂する。 令和5年度は、「自己集合構造上に集積した遷移金属イオンによる機能発現」を実施する。エステルの加水分解反応とアニリンの酸化カップリング反応に焦点を絞り、触媒活性の発現について検討を行う。また、機能性タンパク質を自己集合ナノ構造上に集積することも検討する。Hisタグを融合した蛍光タンパク質を用いる。さらに、硫化処理を行うことにより、金属硫化物の調製とナノ構造および分光特性の解析も検討する。これらの実験により、自己集合ナノ構造上に集積した遷移金属イオンによる機能発現を実施する。
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