研究実績の概要 |
以下に、本研究計画において得られた研究成果を示す。 1.前年度までの研究(Chem. Commun. 2022, 58, 3274, Selected as an inside front cover)を踏まえて、液晶性金属錯体型フォルダマーを用いたナノ空間に水が取り込まれるかについて評価した。本研究では、高輝度光科学研究センターの池本博士と連携し、集光性が高く、高輝度をもつシンクロトロン放射光を線源とした赤外分光測定(SPring-8, BL43IR)により、高湿度条件下における液晶性金属錯体型フォルダマーの分子組織に取り込まれた水の赤外吸収等を用いた解析を行った。 2.サイズと化学的な空間が均一な大環状化合物の開発は、水を取り込むナノ空間の開発において重要である。ジフェニルアントラセン骨格の両端にbeta-ジケトン基をもつ配位子を合成した。この配位子を等モルのCo(III)イオンと混合することで、配位結合による自己組織化を利用した環形成反応により、大環状Co(III)三核錯体を得た。本研究では、この大環状金属錯体の単結晶試料について、放射光による単結晶構造解析を行った。その結果、環の内部直径は約1.5 nmであり、Co(III)イオンをもつ人工レセプター分子の中では極めて大きな空孔サイズ(約316 A3)の内部空間をもち、テトラフェニルボレートアニオン等の大きなサイズのイオンが包接されることが明らかとなった(Eur. J. Inorg. Chem., 2023, 26, e202200592, Selected as Front Cover)。 3.また、液晶性大環状化合物のナノ空間の解析や、一次元に配列する大環状金属錯体が構築するナノチャネル空間の機能開拓を検討した。環状分子の自己組織化によって構築される空間に有機分子が取り込まれることが明らかとした。
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