水圏機能材料において材料と水界面の水和構造を最適化するには、水素結合ネットワークの動的構造情報が現れる10 meV以下の振動領域を界面選択的に測定する必要がある。本研究では、従来の界面分光法では難しかった、電極-電解質界面の水素結合ネットワークの動的構造を測定できる技術を用いて、電極反応活性の発現について分子レベルでの理解を深めることを目的に研究を行った。 本年度は、水素発生に対する活性が異なる金属電極を比較する実験を引き続き行い、特に水素発生の活性が低い電極として新たに銀を比較対象に加えて実験を行った。その結果、水素発生に対する触媒活性が強い金属電極ほど、テラヘルツ領域の水素結合ネットワークに関わる振動ピークおよび局所緩和応答が顕著な電位依存性を示すことを確認した。この結果は、触媒活性が強い金属電極ほど、負電位印加時に水素結合の局所欠陥が増えていることを意味している。水の還元分解は、周囲とネットワークを形成して安定化した水クラスターよりも、孤立した水1分子の方が起こりやすいと言える。したがって、水素発生触媒の機能は、電極近傍の水分子を水素結合ネットワークから引き離す作用として働くことで、還元分解を補助するものであることが確認された。 また、領域内共同研究として、水のテラヘルツ領域のラマンスペクトルについてMCR解析を試みた。その結果、電解質濃度の異なる水のラマンスペクトル全てについて、純水スペクトルと水和水スペクトルの和としてスペクトル分解が出来た。これは、水分子の集団運動を反映するテラヘルツ領域においても、緩和応答成分のスペクトルが水素結合の局所欠陥の情報を主に反映していることを意味しており、スペクトル解釈の妥当性を検証できた。
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