両親媒性ペプチド(PA)は、水中で自発的に組織化し、分子設計や環境に応じた様々な水圏超分子を形成し、その超分子の構造に応じて様々な機能を発現する。本研究は、PAの疎水部に着目し、ここに様々な置換基を導入することで、PA超分子の構造制御と機能発現を目指している。PA超分子の機能として、特に細胞への作用(接着性、活性化)に着目した。 2022年度は、疎水部の構造の異なる各種PAを合成し、超分子作製と構造評価を主に行った。A02シミュレーション班やA03機能開拓班との班間連携により、分子動力学シミュレーションやX線構造解析手法を取り入れ、疎水部が分子間相互作用のゆらぎに与える影響など、従来明らかでなかった構造体内部の情報を得ることができた。 2023年度は、引き続きPA超分子の構造評価と機能開拓を推進した。交互配列型のPA超分子では、ドラッグデリバリーキャリアとしての応用を志向して超分子表面のペプチド配列の改変を行い、核酸と複合化することに成功した。核酸の細胞内移行効率が超分子のサイズ依存的であることも確認できた。また、細胞膜受容体に対するリガンドを修飾したPA超分子に関しては、疎水部の置換基サイズに依存した受容体への作用と細胞活性化を示した。以上の結果に関し、1件の論文発表および7件の学術集会・シンポジウムでの研究発表(内3件は招待・依頼講演、1件は国際学会)を行った。 以上、本研究を通し様々なPA超分子を調製し細胞作用を評価することで、細胞への作用部位を超分子表面に、超分子の構造・機能制御部位を超分子コアである疎水部に持たせることで、細胞作用を制御可能であることを示すことができた。また、班間連携の共同研究で先端計測やシミュレーション手法を取り入れ、従来手法では得られなかった超分子の構造情報が得られたことは本研究の重要な成果である。
|