研究実績の概要 |
水溶性高分子として、糖鎖が側鎖に結合した、糖鎖高分子を中心として、各種の水溶性高分子の合成とその解析について行った。これまでの研究で、ポリエチレングリコールと糖鎖高分子のブロック共重合体からなる水溶性ブロック高分子のいくつかが自己組織化することが観察されてきた。しかしながら、これまでに報告した分子と同じ高分子( Langmuir, 2018, 34, 8591)を再合成したところ、光散乱で観察できる大きさの分子集合体を観察することはできなかった。分子間相互作用レベルでの解析に検討内容を切り替えて検討を行った。 先ず、異なる種類の単糖(Glc, Man, Gal)を側鎖に有するメタクリレート型のモノマーを合成し、RAFT重合法で高分子を重合した。RAFT重合は、PEG末端を持つRAFT剤及び、他のRAFT剤によって行った。Manを側鎖に持つ糖鎖高分子について、100mer以上の分子鎖長について、分子集合体の形成を検討したが、動的光散乱(DLS)にて分子集合体の形成は観察できなかった。そこで、糖鎖高分子の分子末端を還元して、チオール化した上で、水晶発振子(QCM)上の金基板に固定化し、糖鎖高分子間の相互作用の測定を行った。Manを側鎖に有する糖鎖高分子間に強い結合が観察され、タンパク質間相互作用と同程度以上の相互作用があると推定された。同時に、分子間相互作用は、カルシウムイオン選択的であることを明らかにした。DLSでは分子集合体が観察されないが、微視的レベルでは分子集合体が発生していることを、X線小角散乱より明らかにした。また、糖鎖高分子の効率的な合成方法について、PET-RAFT法を用いた方法によって、検討した。光特異的な官能基によるライブラリー調製法について更に検討した。疎水性モノマーを含む各種の糖鎖高分子の合成をPET-RAFT法で行った。 また、分子集合体の調製としてフェニルボロン酸ポリマーとの水素結合形成による分子集合体の形成についても検討を行った。
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