DDSのナノキャリアは、水中で、標的以外の細胞とは相互作用せず、標的細胞とは相互作用するという、相反する機能を兼ね備えることが求められる。申請者は血中滞留性を示すポリエチレングリコール(PEG)修飾デンドリマーと加温によって細胞との相互作用を変化することができる温度応答性デンドリマーを合成し、DDS材料として利用してきた。本研究では、PEG修飾デンドリマーと温度応答性デンドリマーをDDSナノキャリアのモデルとして用い、これらの水和挙動とそれぞれの機能との相関について、明らかにする。 PEG修飾デンドリマーについて、様々なPEG修飾デンドリマーを合成し、様々な含水率で示査走査熱量測定(DSC測定)や赤外分光測定を行い、水和挙動を調べた。また、デンドリマーの末端へのPEG量によって水和状態が変化することが分かった。PEG鎖長や結合数、さらに、世代数の異なる様々なPEG修飾デンドリマーを合成し、水和状態や体内動態、抗PEG抗体の産生量について検討し、構造と機能との相関を明らかにした。既存のPEGリポソームを投与するとPEGの免疫応答が見られるのに対して、PEGデンドリマーではPEGの免疫応答が回避できる可能性が示された。 一方、温度応答性デンドリマーについては、温度・pH応答性を示すフェニルアラニンを修飾したアニオン性末端デンドリマーにおける末端構造と刺激応答性との相関を調べるとともに、内部に金ナノ粒子を保持して水中でのペルオキシダーゼ活性について明らかにした。
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