研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04559
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
緒明 佑哉 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90548405)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キノン誘導体 / 非晶質共役高分子 / 水素発生電極触媒 / リチウムイオン二次電池 |
研究実績の概要 |
本研究は、「キノン含有共役高分子材料の水圏および非水圏での機能制御とエネルギー関連応用」を目指す。キノン含有高分子材料は、メタルフリーなエネルギー関連材料として、水圏での水系キャパシタおよび水素・酸素発生電極触媒、非水圏でのリチウムイオン二次電池の有機正極の創製が期待され、金属資源に頼らない次世代有機エネルギー材料の実現につながる。そこで、キノン誘導体を含む高分子材料について、どのような分子・高分子・ナノ構造を作ると、水圏および非水圏で酸化還元に基づく機能を発現できるかを、データ科学的手法を援用することで解明する。2023年度は、【課題1】多様なキノン含有共役高分子材料の合成と水圏・非水圏での酸化還元活性の評価に従い、いくつかのキノン誘導体含有高分子材料を作製し、水素発生電極触媒およびリチウムイオン二次電池の電極活物質としての性能を実測した。また、その中で初期的な特性評価の結果が好ましかった試料について、【課題2】合成条件・ナノ構造の最適化を行い、性能向上を試みた。低温で合成した中では世界でも最高レベルに匹敵する触媒活性を示した。また、リチウムイオン二次電池正極活物質としての性能も、正極単体で高いエネルギー密度をもつ高分子材料を発見することができた。これらの再現性を確認しつつ、論文での公表の準備を進めている。【課題3】データベース化と機械学習を活用した水圏・非水圏での酸化還元活性因子の探索については、自前の実験データだけではデータが足りないため、文献データを収集して性能予測モデルの構築を試みた。特に、水素発生電極触媒の性能である過電圧を予測するモデルを構築することができた。上記の成果以外にも、領域内の共同研究を通じたいくつかの水圏機能材料に関する発展があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で、以下の3つの課題を順次進める予定であったが、これらを並列に進めることとなった。 【課題1】多様なキノン含有共役高分子材料の合成と水圏・非水圏での酸化還元活性の評価 【課題2】合成条件・ナノ構造の最適化による酸化還元活性および性能向上 【課題3】データベース化と機械学習を活用した水圏・非水圏での酸化還元活性因子の探索 成果に示したように、いずれも並列的に着実に研究が進んでいる。2023年度に作製した材料の中から、どのような分子・高分子が水圏および非水圏で高性能を発揮しうるかは経験的に見えつつある。以上のことから、順調に研究が進んでいると思われる。さらに、計画していた材料以外にも、ナノシートを使った超撥水コーティングや高伸縮性を示すヒドロゲル材料など、水圏機能材料の領域に参加して得られる知見に着想を得た機能材料の創製も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度もこのまま課題1~3を並列的に進める予定である。2022年度に得られた材料の構造や特性の再現性を確認し、論文などでの公表に向けて準備を整える。性能予測に基づく合成とナノ構造制御を行って性能向上を図るとともに、それらの性能の支配因子の解明を目指す。特に、水圏ではたらくキノン含有高分子材料については、水との親和性の評価に基づく構造-機能相関の解明を、領域内の共同研究を通じて目指す。これらの検討を通じて、キノン含有高分子材料の水圏と非水圏でのはたらきの違いを理解する。さらに、領域内の多様な共同研究に参画し、材料およびMIの両面から、領域研究の発展に貢献する。
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