研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04561
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
藤田 恭子 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (90447508)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水和状態 / イオン液体 / 生体分子 / 構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、水和イオン液体中の水分子数を変化させながら、溶解する生体分子の高次構造や標的分子との相互作用への影響について解析を行った。イオン構造を選択したイオン液体を用い、含水率を変化させながら、溶解する核酸アプタマーの構造変化について解析を行った。配列の異なる緩衝液中で四重鎖構造を形成する核酸アプタマーを用いて検討を行った。その結果、検討に用いた核酸アプタマーはいずれも水和イオン液体中に溶解後も緩衝液中と類似の四重鎖構造を保持していることを確認した。 さらに含水率を変化させながら核酸アプタマーの構造に及ぼす影響を分光学的に解析した。その結果、スペクトル強度の変化が観測され、水和状態によって核酸アプタマーのトポロジー変化が生じていることが明らかとなった。また、含水率の異なる水和イオン液体下、異なるトポロジーを示す核酸アプタマーは標的分子との相互作用も変化することを示した。水和状態によってトポロジーが変化したことで、標的分子との相互作用も変化したことが示唆された。さらに、含水率を制御した水和イオン液体中で、核酸アプタマーの安定性の向上が観測された。得られた結果は、J. Mol. Liq.に掲載となった。 水和イオン液体中の水の特性について、領域内共同研究により各種分光法を用いた検討も進めた。同じ含水率であってもイオン液体によって溶解後の生体分子の高次構造に及ぼす影響が異なるが、このような構造への影響を引き起こす因子の一つとして、存在する水分子の水素結合状態が影響する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
含水率を制御した水和イオン液体を用いることで、場の水和状態により核酸アプタマーのトポロジーが変化することを確認した。さらに、トポロジー変化に伴い標的分子との相互作用も変化した。自由水の存在しない水和イオン液体中では核酸アプタマーの安定性が向上することを示した。 また、水和イオン液体中の水素結合の解析や水和状況について、領域内共同研究を進めることができた。分光学的な解析から、生体分子の高次構造を保持した溶解を実現するような水和イオン液体中では緩衝液中と類似の水素結合状態が形成されていることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き水和イオン液体を場とすることで、水和状態を変化させながら性質の異なる生体高分子を用いて高次構造や標的分子との相互作用について解析を進める。用いる生体分子によっては、イオン液体の構造の選択が必要になることが予想されるが、これまでの経験と知見を基にしながら、高次構造を保持した溶解が可能な系を選択、合成する。 水和イオン液体中の含水率変化に伴う水分活性変化や水素結合状態、その他の物理化学的なパラメータについても解析を進める。領域内共同研究も積極的に進めることで、多方向からの解析、理解につなげる。
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