本年度は単離した膜貫通型αヘリックスタンパク質をターゲットとして、水和イオン液体中への溶解と溶解後の構造、安定性について解析を行った。溶解後の膜タンパク質の二次構造に影響を及ぼすイオン構造の共通性について基礎知見を集積した。イオン構造を選択することで水溶液中と同様の二次構造を保持した溶解が可能であることを確認した。含水率を変化させてながら解析を行うことで、二次構造が変化する含水率域の存在を確認した。光駆動型膜タンパク質であるバクテリオロドプシンを用いた検討では、二次構造だけでなくタンパク質内部に位置する発色団レチナールが水溶液中と同様の状況で存在しており、光照射に伴うプロトンポンプ輸送に伴う構造変化も水和イオン液体中でも観測された。水和イオン液体中に溶解後、検討を行った膜貫通型αヘリックスタンパク質の変性温度は水中に比べて20℃以上向上することを確認した。 また領域内共同研究を進め、各種分光法やシミュレーションを用いて水和イオン液体中の水分子について解析を行った。分子間振動バンドをプローブとするフェムト秒ラマン誘起カー効果分光により、濃度の異なる水和イオン液体の低振動数スペクトルを測定し分子間振動バンドの評価を行い、カオトロピックとコスモトロピックなアニオンでは微視的な水和構造(第二、第三溶媒和圏)が異なることを明らかにした。得られた結果はJ. Phys. Chem. Bに掲載となった。
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