公募研究
共有結合性有機構造体(COF)は有機構成単位が共有結合により組みあがり、規則的な多次元構造を構築する、新しい多孔質結晶性材料である。COFの高い機能性により、我々はこれまで1)ドラッグデリバリーシステムに適したCOF、および2)水浄化を目的としたCOF膜4)の合成に成功し、COFが分野横断的な応用への可能性を有することを証明した。本研究課題では他の多孔質材料を凌ぐ、より高度な機能性を有するCOFの実現に向けて、構造内の遊離ヒドロキシ基が膜の親水性の向上に与える影響の調査を行った。COF膜は酸触媒によるシッフ塩基形成反応により、ソルボサーマル条件下でポリフッ化ビニリデン基板上に合成した。有機構成単位として、官能基数の異なる2種類の有機配位子を選択することで非化学量論的反応により細孔内に未反応の親水基が生じさせ、水が通りやすい膜を設計した。得られたCOFは結晶性および熱/化学的安定性を示した。また、染料分離能の評価により、96%の高い染料除去率を示すだけでなく、親水基を有さないCOFと比較し約10倍の高い水透過率を示し、親水基が水透過率の向上に影響していることが示唆された。さらに湿度条件下での赤外分光法測定により、湿度増加に伴いC=O伸縮バンドの低波数シフト、およびC-Ph伸縮バンドの高波数シフトが確認され、アルデヒド基と水分子との水素結合の強化が明らかとなった。また、構造内では速い速度で水吸脱着が行われていることが明らかとなった。今後は新規COFを合成し親水基数や細孔サイズと水分子との関係調査を目的とした比較実験を行う。COFは高機能性かつ低環境負荷な材料であるため、今後水圏分野においても応用が期待される。本研究の推進は機能の追及により、目的に合った材料の設計に貢献したといえる。
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