研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04563
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
森田 成昭 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (20388739)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 赤外分光 / 近赤外分光 / ケモメトリックス / 機械学習 / バイオマテリアル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,材料の分子機能に水分子が重要な役割を果していると考えられているバイオマテリアルについて,振動分光による構造機能相関研究を実施することである.そのために当該年度は,新たに中赤外透過フローセルと近赤外透過フローセルを準備して,乾燥試料が含水する過程,あるいは含水試料が乾燥する過程を時間依存測定できるようにし,中赤外領域における分子の基準振動,あるいは近赤外領域における倍音・結合音の変化を観測できるようにした.さらにこれらを用いて,水溶性バイオマテリアルである polyvinylpyrrolidone (PVP) が含水する過程の時間依存中赤外スペクトルと時間依存近赤外スペクトルをそれぞれ測定した.その結果,水和水に由来する信号,及び水和された PVP 鎖の信号,いずれにおいても時間に依存するスペクトル波形の変化がみられ,含水量の増加に伴う水和構造の変化が示唆された.このスペクトル波形の時間変化を理解するために,Multivariate Curve Resolution (MCR) によるデータ解析や,密度汎関数法に基づく量子化学計算を行った.さらに,データ解析によって予測された水和構造の妥当性を確認するために,PVP のモデルモノマーである N-methyl-2-pyrrolidone (NMP) を用いた実験と計算をすすめており,今後の研究によって PVP の水和による構造機能相関を明らかにする予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年間の研究計画において当該年度は,実験とデータ解析の準備を行う予定であった.これに対して,初歩的なデータではあるが,水溶性バイオマテリアルである PVP について,データ解析に耐えられる実験データを得ることができ,これを用いて試験的なデータ解析を行うことができた.これらの成果をもとに,今後はより精度のよい実験とデータ解析をすすめていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究によって,水溶性高分子の水和構造を調べるのに,本研究で提案した実験とデータ解析が有用であることが見いだされつつある.今後はこれらの手法を改良しながら,PVP 以外の水溶性高分子について実験とデータ解析を行い,それらを比較することで,材料の構造機能相関を明らかにしていく予定である.
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